飼養管理レポート

 
私たち酪農総合研究所は、雪印メグミルクグループの掲げる3つの使命を果たすために、「酪農生産への貢献」の一翼を担う活動に取組んでいます。

特に、酪農産業に関る幅広い分野の科学的・実践的調査研究とその成果の普及を通して、わが国酪農の発展と食糧の安定的需給に寄与してまいります。

2018年3月8日木曜日

高泌乳牛の繁殖成績の現状とその改善について考える

雪印メグミルク株式会社酪農総合研究所は2018年2月1日、酪総研シンポジウム「酪農現場の“カイゼン”を考えるⅡ -牛づくりにおけるロスとその対策-」を開催しました。



その講演要旨を今回から3回連載にて掲載いたします。


第一講演

演題 : 高泌乳牛の繁殖成績の現状とその改善について考える

演者 : 酪農学園大学 農食環境学群 循環学類 家畜繁殖学

    教授 堂地 修 氏














 乳牛の繁殖成績は、わが国を含む世界各地域において約30年以上にわたって低下し続けてきた。繁殖成績低下の具体的内容としては、分娩後の初回受胎率の低下、それに伴う空胎日数および分娩間隔の延長、長期不受胎牛および淘汰牛の増加等が主たるものである。乳牛の繁殖成績低下の原因は、泌乳能力の向上を追及した結果であると言われることが多い。一見すると乳量の増加と受胎成績の関係を見るとそのようにみえる。しかし、乳牛の繁殖成績低下の原因を乳量増加のみに焦点を絞って考えてみても繁殖成績の改善の方策を見出すことは簡単でない。農家1戸当たりの搾乳頭数は、昭和60年代の50頭台から平成20年代には100頭台に増えている。1戸当たりの搾乳頭数の増加にともない、フリーストール牛舎やTMRの導入など飼養管理の効率化も進み、個体から群へと飼養管理方法は変化してきた。このような中、牛群の中には個体の能力を十分に発揮でない牛も少なからず存在していると思われる。さらに乳量増加と同じように飼養頭数の増加に従うように経産牛の初回受胎率は低下してきた。

 一般に繁殖成績への泌乳の影響のない育成牛では初回受胎率が最も高く、人工授精回数が増えるにしたがい低下し、4回目以降は一段と低くなる。演者らの受胎率調査では、経産牛では、初回が2回目以降の人工授精の受胎率に比べて最も低いことが分かっている。このことから今日の経産牛の受胎率については、さまざまな観点から検討する必要がある。

 乳牛の繁殖成績を改善するためには受胎率の向上が重要であり、そのためには繁殖生理的な検討だけでは難しく、栄養管理との関係について考える必要がある。一方、最近の報告によると国内の乳牛の空胎日数の最頻値は78日であり、多くの牛は分娩後60日前後に初回人工授精が実施されて受胎していると思わる。このことは、受胎が大きく遅れる牛が多いことを示しており、このような牛に重点を置いた対策を検討することも経産牛の繁殖成績の改善において重要であると思われる。

 高泌乳牛では、分娩前後の栄養状態が次回の受胎成績に強く影響することが良く知られている。一般に乳牛は分娩前から採食量が減少し、分娩後しばらくは採食量が減少したままの状態にあり、体重が減少し、ボディ・コンディション・スコアが低下する。そのような状態にあっても、今日の乳牛は乳量を増やし続け、ピーク乳量到達が早い。一方、乳量増加に見合う十分なエネルギーを採食(飼料)によって賄うことができない牛が多く、このような牛は繁殖機能の回復が遅れる受胎も遅れる。結果的に繁殖成績の低下が顕著になるとともに、健康状態にもさまざまな悪影響が発生する。そのため、群管理における栄養管理と繁殖管理については詳細な検討が必要である。特に、牛群の規模が大きくなりつつある今日にあっては重要である。

 最近の酪農業界は、乳価や個体販売価格の上昇など明るい話題もあるものの、依然として酪農家戸数の減少、担い手不足や生産乳量の増加など重要な課題が多く存在する。このような中、乳牛の繁殖成績の改善は重要かつ喫緊の課題である。しかし、繁殖成績の改善は繁殖技術を駆使しても簡単に解決できなことはこれまでの経験からも分かっている。そのため、育種、栄養、飼料生産、繁殖など、乳牛の飼養管理に関する全てについて、もう一度見直す必要がある。本講演では、演者がこれまで得てきたデータを紹介しながら、乳牛の繁殖成績、特に受胎成績に影響する要因について焦点を当てて検討してみたい。

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