コラム5 『希望不失』

[酪総研コラム5ー2023年1月掲載] 希望不失 新年明けましておめでとうございます。 酪農乳業界はこの1~2年凄まじい円安、生産コストの高騰などが日本の酪農経営に大打撃を与え、終わりの見えない不景気を前につい暗い気持ちになってしまいがちである。酪農家さんと話をすると「大変だ、厳しい…」などと皆異口同音に言うが、暗い表情の方は少ない。実際は、私たちの見えないところで苦労し、考え、知恵を出してこの難局を乗り越えようと必死に1日1日格闘しているのだろう。その前向きな姿勢には頭が下がる思いである。 日本人は正月を大事にする民族であると言われている。昨日までは去年、1日過ぎるともう新年。新年を迎えると「新年の抱負」を掲げることがよくあり、その抱負を何文字かで表すことも多々ある。 今から二十数年前の酪農家との懇談会での資料をいまだに持っているが、その資料の中に「四言詩」だけが書かれたページがある。「四言詩」の雅号に「雪山」とあり、この雅号から雪印乳業㈱初代社長佐藤貢翁が記した四言詩であることがわかる。そういえば、この懇談会の数日前に佐藤翁が101歳の天寿を全うされた記憶がある。 天地有限 人智無限 万策雖尽 希望不失 佐藤翁は関東大震災後の酪農の危機ともいえる時に酪農民救済を目的に1925年「有限責任 北海道製酪販売組合(翌年、組織変更して“酪聯”となる)」が設立された時の唯一の職員(製造主任)である。そして7月25日たった一人でバターの製造を開始した。 佐藤翁がこの詩を書いた時期、その時の背景などわからないが、酪農乳業界は過去幾度もあった危機を皆で乗り越えてきた。いま直面している危機も皆で智恵を出し、希望を持ち続ければきっと乗り越えることが出来る。 2023年を終えた時、笑って過ごせた1年であったと思えるよう願う。