投稿

1月, 2024の投稿を表示しています

コラム13 『草創無限』

  [酪総研コラム13ー2024年1月掲載] 『草創無限』 新年明けましておめでとうございます。 1923年に発生した関東大震災は北海道の酪農経営にも大打撃を与え、その打開策として1925年に設立された有限責任北海道製酪販売組合は、雪印乳業(株)を経て、現在の雪印メグミルク(株)となり、間もなく100周年を迎える。また、雪印乳業(株)の創立50周年記念事業として1976年に設立された酪農総合研究所(以下、酪総研)も時を置かずに50周年を迎えることとなる。年初にあたり、しばし歴史を振り返ってみたい。 表題の「草創無限」は、酪総研初代所長の大原久友先生が“人生哲学ともいうべき”として自叙伝の題字に記された言葉である。大原先生は、草地学研究、草地学教育、草地開発を通した畜産業界への貢献により北海道文化賞も受賞された草地学の権威である。酪総研の設立当時より基本としている「健土健民精神」について、大原先生は“健土は土づくりから草づくり、牛づくり、そして乳づくり、健民は人づくりで生産者も消費者も含めた、すべての人間が健康に生きる”と解釈して研究を推進してきたと「酪総研10年史」で述べている。 時代を1920年代後半まで遡ると、昭和初期の北海道の大凶作による酪農の危機に立ち向かうため、黒澤酉蔵翁(元酪総研名誉会長)ら北海道酪農のリーダーは、経営の合理化運動として「三立主義」を展開した。平たく言うと“自分で作った食物を安値で売り、逆に高い食料品を買い求める。これではいつまでも貧乏は続く。購入飼料に頼らなければならない経営は支出がかさみ採算割れになる。故に栄養価の高い飼料の自給に努めなければならない。多額の肥料代は経営の癌である。堆厩肥・緑肥の増産によって金肥の多用による地力の減耗を防ぐことが肝要である。”という運動である。これこそ「健土健民」の具体的展開例であろう。 時計の針を現在に戻すと、輸入飼料価格の高騰が我が国の酪農経営を圧迫しているのが現状である。酪総研は雪印メグミルクグループのDNAに刻み込まれた「健土健民」の精神に基づき、「自給飼料の利活用」の調査研究という具体的展開を通じて酪農生産に貢献していかなければならないと、年の初めに改めて肝に銘じることとしたい。