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コラム9 『2022年の酪農経営環境を整理する』

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  [酪総研コラム9ー2023年7月掲載] 2022年の酪農経営環境を整理する    酪総研では2019年から酪農経営の分析・診断を実施しているが、直近の2022年は令和の畜産危機とも称される厳しい経営状況となった。現在、決算資料等に基づく分析を進めているところだが、経営環境の変化が酪農経営に与えた影響が個々の定量的なデータとして見えてきた。本コラムでは、主に北海道の酪農経営収支に影響を与えた諸要因について、公表されているデータをもとに整理してみたい。  北海道における家畜市場の相場は表1のとおり大幅に下落し、個体販売の収支に悪影響を与えたことが確認できる。例えば、年間100頭(廃用牛30、初生トク40、初生F1牛30)を販売する経営であれば、粗利益が約500万円減少したことが試算できる。  市場相場の月別推移は図1のとおりで、大手畜産会社が民事再生法の適用を申請した2022年9月をボトムに市場相場が下落したことが確認できる。特に、概ね10万円前後で安定的に推移していた初生トクの価格は9,424円まで暴落し、初生トクの成約率も2021年度の99.1%から2022年度は92.7%に、2022年9月には80.0%まで下落した。同月の根室市場の成約率は52.3%であり、主取りとなった牛を廃用処分とした場合、収益性の更なる悪化要因になったと考えられる。 乳用牛配合飼料の価格は表2・図2のとおり断続的に上昇し、経営収支に悪影響を与えたことが確認できる。例えば、日量1tの配合飼料を給与する経営であれば、2022年は飼料コストが前年より約550万円増加したことが試算できる。一方で、2021年度第1四半期から配合飼料価格安定制度に基づく価格差補填が継続的に発動されているほか、2022年度第3四半期には配合飼料価格高騰緊急特別対策による補填金も交付されていることから、上記で試算した増加コストの相当部分が吸収され、飼料価格の高騰が年度収支に与えた影響は限定的であったと考えられるだろう。 北海道の牛群検定成績(表3)によると、2022年は経産牛1頭当り乳量や乳成分が伸長しているにもかかわらず濃厚飼料給与量は増加しておらず、乳代から購入飼料費を差し引いた年間成績は244万円増加していることが確認できる。生産技術の向上により収益性の改善が図られたことが推察できるだろう。 北海道(ホクレン)に