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コラム36『働けぬ夏』

   [酪総研コラム36 ー2026年9月掲載]                 『 働けぬ夏』   「暑さで仕事ができない」  一昔前であれば、何を大げさな表現を・・・と思われたかもしれない。しかし、いまや現実になりつつある。そんな衝撃的な見出しが7月7日の日経新聞1面が飾った。新聞記事での紹介では、猛暑の影響で建設業や物流業などが作業時間の見直しや一時中断を進めている報じてた。「社員の命が最優先」その考えのもと、暑さを前提に働き方そのものを変えようとする動きである。  世界では 2024 年、猛暑によって約 28 億時間の労働時間が失われたとの推計も紹介されていた。暑さは個人の体調管理ではなく、企業経営や社会全体の生産性を左右する課題になった。この視点は、人間社会だけでなく酪農の世界にもそのまま当てはまる。乳牛は暑さに弱く、採食量の減少、乳量や乳成分の低下、繁殖成績の悪化などが生じる。そうなると「生乳を生産する」という本来の役割を十分に果たせなくなる。 猛暑で人が働けなければ当然牛の管理も滞り、乳牛が生乳を生産できなければ酪農経営は成り立たない。人も牛も、暑さで仕事ができなくなるという点では本質は変わらない。  だからこそ、暑熱対策は単なる「夏場の一時対応」ではない。人命を守り、牛の健康を守り、生乳生産を守るための経営戦略なのかもしれない。北海道でも「夏は涼しい」という前提は崩れつつある。これまでの経験則だけでは乗り切れない夏が、すでに始まっていると感じる。  暑さに耐えること、その中でも懸命に働き続けることが美徳とされる時代は終わった。暑さを前提に働き方を変える企業が増えているように、酪農もまた、人と牛の双方が能力を発揮できる環境づくりへと発想を転換すべき時期に来ている。「働けない夏」を前提とした備え。これからの酪農経営に欠かせない視点であり、対策は急務だ。暑い夏はまだまだ続く。                                        (コラム執筆:大山 冬馬)