コラム1 『~コロナ禍~ に思う』

 [酪総研コラム1ー2022年7月掲載]


~コロナ禍~ に思う

 コロナ前はマスク着用が嫌で仕方なかった自分が、今ではマスクを着けていないと違和感を感じる日常が当たり前になった。電車の中で、マスク未着用の人や咳き込む人が隣に来ると、何となく避けてしまう自分がいるのも事実だ。寂しいけれども随分世知辛い世の中になってしまったようだ。

 2020年1月に日本国内で最初の新型コロナウイルス感染者が発生してから2年半余りが経過するが、これまでに国内の感染者数は約920万人、死者は約31千人(いずれも6月20日現在)。世界中では感染者数5億5千万人、死者数650万人に上る。

 世界経済は大混乱に陥ったが、これが半世紀前に起きていたとすれば、もっとパニックになっていたし、こんなに早く立て直せる状況にはなかっただろう。スピーディなワクチン接種が功を奏したと言えるのではないだろうか。

 とは言え、我々酪農乳業界は未だに混乱から抜け出せないでいる。

 コロナ禍によって、牛乳乳製品需要の急激な減少が起こり乳製品の過剰在庫問題が発生。加えて、ロシアのウクライナ侵攻と相まって飼料価格・肥料価格・物流費等が大暴騰となり右肩上がりで上昇する生乳生産費の問題が発生。

 現在、国によって価格高騰の影響軽減に向け議論が進められているところだが、現場努力だけでは如何ともし難い問題だけに、酪農生産者は疲弊し乳業者や流通業者も頭を悩ましている。こうした様々な課題が露呈した酪農乳業界だが、そこから抜け出す道筋がなかなか見い出せていないのが現実だ。

 そもそも生乳需給問題は、生乳が保存のきかない生ものであり、生乳生産は水道の蛇口をひねるように簡単に調整できるものではないことから発生する。これまでも、緩和と逼迫を繰り返しその都度現場は需給調整に苦労してきたはずである。需給調整は主に、国による国家貿易と民間での生乳生産とで調整してきたが、国際化に伴う民間貿易増加や数年前の畜安法改正により、これまでのやり方では需給調整が難しくなっている。そこに、今般のコロナ禍によって一層輪をかけた格好だ。

 今後とも日本酪農を持続させていくためには、生乳需給調整の仕組みを官民一体となって早急に築き上げていく事が不可欠ではないだろうか。例えば過剰在庫を国が買い上げ市場から隔離するセーフティネットや、国産チーズを増産することで調整できる様な補助政策とするなどである。今回の大混乱が教訓となって速やかに対応策を築き上げることを期待したい。

以 上



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