コラム3 『持続可能な酪農の推進とは』

 [酪総研コラム3ー2022年10月掲載]


「持続可能な酪農の推進」とは

 「持続可能な酪農の推進」が求められている。この言葉が取り上げられるようになって久しいが、最近、取り上げられる回数が特に多くなった。これは、多くの人たちにとって、農業由来の環境問題や食料の安全などの課題がより身近になり、危機意識を持つようになったためだろう。

 ところで、そもそも酪農は‟持続可能なもの”ではなかったのか?

 本来、ウシは人間が利用できない草を食べ、乳や肉をわれわれに与えてくれ、生活を豊かにしてくれる存在で、家畜ふん尿から作られた堆肥は土地を豊かにしてくれる。というのが酪農ではないか?

 当社の前身のひとつである雪印乳業の創業者のひとりである黒澤酉蔵翁は「酪農とは何ぞや」という問いに、

『地力を増進しうる作物を作りながら、家畜を飼養管理し、乳肉を生産し、ふん尿を土地へ還し、より高度の家畜から乳肉を生産し、そしてふん尿を土地に還す。そういう農業だと』

と言っている。単に「家畜を飼い、乳肉を生産する農業」ではないのだと。

 土地面積とウシの頭数がバランスしていれば、この限りにおいて酪農・畜産業は持続可能なはずである。

 昔ながらのやり方に戻ることが良いとは決して言えない。遺伝的に高度に改良された現代の乳牛の生産性を維持しながら健康に飼養するためには、穀物も食べさせなければ栄養充足させることが難しく、健康に飼養できない。堆肥を土地に還元するだけでは養分が不足するので、不足分は化学肥料を適度に使い補わないと効果的に土地の生産性を上げることはできない。なぜなら土地や資源に乏しい日本では、効率的で生産性の高い農業生産を行っていかなくてはならないからである。

 すべては‟適度にバランスをとって”ということではないだろうか。穀物飼料(≒輸入飼料)に過度な比重をかける飼養管理や、化学肥料に頼って作物を収穫しようとするのではなく、土地面積に見合った適正な頭数を飼育し、科学技術を利用しながら環境に負荷をかけることなく、家畜の健康に留意して、基本技術による管理を励行することが「持続可能な酪農」なのではないだろうかと思う。


このブログの人気の投稿

コラム11 『代替乳製品は酪農を滅ぼすのか!?』

コラム10 『牛のげっぷ』

コラム8 『今こそ自給飼料生産・国産飼料利用の推進を図るチャンス』