コラム6 『札幌の積雪深と異常気象との関連性から春の農作業を考える』

 [酪総研コラム6ー2023年2月掲載]


札幌の積雪深と異常気象との関連性から春の農作業を考える

 

昨冬、筆者が住む札幌は災害級の大雪に見舞われ、交通網寸断や物流混乱が多発し市民生活に甚大な被害が発生しました。

札幌市がホームページ(以下HP)で公表している「札幌市内の累計降雪量・積雪深」(https://www.city.sapporo.jp/kensetsu/yuki/ac_snow.html)を見ても、昨冬はまさに大雪をもたらした異常気象でした。

ところで異常気象といえばエルニーニョ/ラニーニャ現象が有名です。その説明は気象庁HP「エルニーニョ/ラニーニャ現象とは」(https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/data/elnino/learning/faq/whatiselnino.html)に譲りますが、日本への影響を大まかに説明すると、エルニーニョ現象は冷夏および暖冬、ラニーニャ現象は猛暑および厳冬を招くと言われています。

そして図1のとおり昨冬はラニーニャ現象下だったことがわかります。

※エルニーニョ監視速報 No.363(令和3年12月9日 気象庁報道発表  https://www.jma.go.jp/jma/press/2212/09a/c_kanshi_print.pdf)では、202211月の実況と202212月〜20236月の見通しとして、「ラニーニャ現象が続いている。今後、ラニーニャ現象は終息に向かい、冬の終わりには平常の状態となる可能性が高い」としている。





そこで前述の札幌市HPに掲載されている過去の観測データから積雪深とエルニーニョ/ラニーニャ現象の関連性を調べてみました。データ閲覧可能な過去17年間にエルニーニョ現象年は4回、ラニーニャ現象年は6回、平常年は7回あり、それぞれの積雪深の平均を集計しグラフ化したのが図2です。




このグラフをみると、シーズン中盤の1月中旬までの各積雪深にあまり大きな差は感じられませんが、積雪深が最大となる2月下旬~3月上旬に向け、ラニーニャ現象年>平常年>エルニーニョ現象年といった関係が顕著に表れ、その後ラニーニャ現象年と平常年はほぼ同じ動きをたどるのに対し、エルニーニョ現象年の積雪深はそれらより低く推移していくのがわかります。一般的にエルニーニョ現象の冬は少雪、ラニーニャ現象では豪雪になりやすいと言われていますので、上図はそれを表しています。その中で、筆者が着目したのは積雪深がゼロになるタイミングです。ラニーニャ現象年と平常年はほぼ同じタイミングなのに対し、エルニーニョ現象年ではそれより約5日早く積雪がゼロになっています。このことからエルニーニョ現象年の春はそれ以外の年よりも5日ほど早く農作業に取り掛かれることが見てとれます。

農作業において「秋の1日は春の7日」ということわざがあります。これは秋に農作業が1日遅れると春の農作業7日分の遅れにつながるという意味だそうです。春の農作業も秋ほどではありませんが同様のことが言えます。根雪が消え圃場に入れる最短のタイミングを狙うことができるように作業機械をメンテナンスし、種子や肥料などの資材を万全に準備しながら、1日でも早くスタートダッシュできれば、その後の工程に大きく差が付くことは容易に想像できます。冬の農閑期に春の作業計画を策定するとき、異常気象が当たり前になった現在では、漠然と過去の経験則から日程を決めるのではなく、様々な情報を体系的に収集し、状況を先読みしながら計画を策定・実行することが今流の情報化社会における農業スタイルなのかもしれません。

そんな今流の農業を展開するにあたり、今回のようなちょっとしたマメ情報を参考にして頂ければ幸いです。


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