コラム12 『年の瀬に~憂う』
[酪総研コラム12ー2023年12月掲載]
年の瀬に~憂う
年の瀬を迎え2023年を振り返ってみると、今年もまた様々な出来事が後を絶たなかったなとつくづくと感じる。もうじき丸4年を迎えようとしている新型コロナ旋風は、ひとまずインフルエンザ並みに落ち着いたものの、ロシアのウクライナ侵攻はいつ終わるのか全く先が見えない状況が続いているし、イスラエルとパレスチナの紛争は、果てしなく続いている。人間ってなんて愚かな生き物なんだと改めて感じた1年でもある。
そんな中我々酪農乳業界も、これまで経験したことのない異常事態が際限もなく続いていると憂慮する。コロナ禍に伴う世界的なサプライチェーンの混乱やロシアのウクライナ侵攻によりエネルギー資源や穀物等原材料のコストは高止まりが続いた。酪農経営の苦境を救うべく、昨年11月に飲用向け乳価10円/㎏の値上げに始まり、今年4月に加工向け10円/㎏、8月に飲用向け10円/㎏、そして12月からは油脂分のみ6円/㎏の値上げと、たった1年の中で乳価の値上げが続き、それに伴い商品の店頭価格が短期間に上昇したため、さすがに消費者の皆様も買い控え、廉価商品への移行が進んでいる状況にある。当社の家庭用商品の価格改定実施状況を見ても、2022年度4回、2023年度5回値上げしており、売上数量が減少傾向にあるのも当然と納得せざるを得ない。
本来、コストアップ分をすべて消費者に押し付けることに無理があるのは明らかだ。食料安全保障の観点から、このような状況にこそ国は国費を投じ、生産者と消費者をともに助けることですべての国民を守るという姿勢を見せなければならないと改めて思うところであるが、農水省をはじめ各省の動きを見る限り、本気で日本の農業を守ろう、国民の食を守ろうという姿勢がまるで見えない。そのような中、「適正な価格形成に関する協議会飲用牛乳ワーキンググループ」での検討・協議がすでに始まっている。しかし、この協議会は学識者を始め、生産者から小売業界までの幅広い職種のメンバーで構成されているため、それぞれの思惑や主張が優先され、メンバーが本気で、本音で、議論することはあまり期待できないと思わざるを得ない。このままでいいのか...?
SDGs、サステナビリティ、TCFD*、TNFD*、脱炭素etc… 。我々メーカーも、そして酪農家の皆様も、これから要求されることはますますエスカレートしていく。嘆いてばかりいても前には進めない。自分たちでできることをまずやって、少しずつでも前進していく事が必要ではないか。国が間違った方向を示さないことを期待しながら、自給飼料の増産、たい肥の有効利用、エコフィードの活用等々、やれることにチャレンジしていくしかない。そしてそれを周囲の生産者団体や乳業・飼料メーカー、普及センター等の関係機関が、しっかりとタッグを組んで支援していくことが成功につながる。
2024年こそ明るい兆しが見えてくることを祈りながら、この稿を終えようと思う。