コラム35『「食育基本法の改正」に思うこと』

 [酪総研コラム35ー2026年8月掲載]

                『「食育基本法の改正」に思うこと

 2005年に食育基本法が制定されて20年、食や農業を取り巻く環境は大きく変わり、20246月には「食料・農業・農村基本法」が改正され、基本理念として「食料安全保障の確保」が規定された。そして、20265月「食育基本法」は改正され、食育が「食料安全保障の確保」にも資するものである旨、目的規定と基本理念に追加するとともに、食料の合理的な価格の形成についての国民の理解を追加した。背景には、消費者が農林水産物の生産にかかるコストを理解して負担したり、地場産品・国産品を選ぶようになるための「食育」を中長期でしっかりと取り組むべき必要があること。今回の改正では、「食料安全保障の確保」、「学校等における食育の強化」、「大人の食育運動の推進」、「食育推進基本計画を通じたPDCAサイクルの確立」等がポイントとなった。

 

「学校等における食育の強化」では、食育の指導にふさわしい職員として栄養教諭を例示し、学校等における食育の強化に必要な施策の例に、「農林漁業教育」を追加するとともに、外部人材の活用の規定を新設し、栄養バランスに優れた「日本型食生活」の実践、幅広い世代に対する農林漁業体験の機会の提供などを推進するとしている。また、「大人の食育運動の推進」では、特に若い世代において、主食、主菜、副菜を組み合わせた食事の回数や野菜・果物摂取量が少ないなど、栄養バランスの偏りや食習慣の乱れがあることから、官民の幅広い連携・協働の取組み等による、大人の消費者の行動変容を促す「大人の食育」を推進するとしている。

 

私たちの食生活は便利になり、「食」も簡便化し、多様化することで「豊か」になった。しかし、地域社会の2極化は進み、都会と田舎、消費者と生産者との距離が遠くなったという一面もある。一般的に「食」への関心が低くなると「おいしい」と感じながら食事を味わうことが減り、「食」に対する「ありがたみ」や感動が薄れ、医学的に脳への刺激も減少すると言われている。また、好き嫌いが増えると、栄養が偏ることに繋がり、児童や生徒の成長に悪影響を及ぼしかねない。「学校等における食育の強化」は、将来を担う子供たちの「食」が問題とならぬよう、「食」を通じた「食育」の重要性を表している。食育基本法が改正され、一般的な食育活動に加えて、それを支える農林漁業や地域、自然との関わりや、食を支える様々な活動が、食育の推進には求められている。

 

20261月の消費者動向調査における食の志向では、①健康志向、②経済性志向、③簡便化志向が3大志向であり、「健康志向」はコロナ後では最も高い水準となった。一方で、2025年「国民健康・栄養調査」の結果では、わが国の食生活における現状と課題として、①中年男性の肥満の増加、②若年女性のやせの問題、③高齢者の低栄養傾向、この3点が現代の日本の3大栄養問題とされ、3060歳代男性の3割以上が肥満、20代女性の約2割が低体重ということ。また、高齢者は低栄養傾向が続くと、筋肉量の低下や日常生活機能の低下により、健康障害に陥りやすいということである。現代人の食生活においては「大人の食育運動の推進」、大人にこそ食育と食に関する理解の醸成や食生活の改善が求められている。自分に置き換えると頭の痛い話にもなるが、「食育基本法の改正」は、食育の推進を支援することにあり、そのまま健康な国民生活に繋がるのである。

                                      (コラム執筆:津田研究所長)

参考文献:食育基本法(内閣府2026527日施行)

消費者動向調査(日本政策金融公庫20261月)

国民健康・栄養調査(厚生労働省2025122日)

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