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コラム23 『外国人入国者数の今』

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  [酪総研コラム23 ー2025年7月掲載]  『外国人入国者数の今 ~続・コラム7「インバウンド需要の回復に期待を寄せる」 』   新型コロナウイルス感染症の国内初感染から3年が経過した 2023 年4月、再び外国人入国者数が増え、是非日本の牛乳・乳製品の美味しさを知ってもらい、需要拡大の牽引役となって欲しいという願いから『インバウンド需要の回復に期待を寄せる』というコラムを掲載した( https://rakusouken-siyou.blogspot.com/2023/04/blog-post.html )。当時の外国人入国者数(特例上陸許可者数を含む)は 2019 (令和元)年の 3,614 万人から 2021 (令和3)年の 77 万人まで急減し、 2022 (令和4)年には 468 万人へ若干の回復傾向が見えた時だった。 あれから2年、 2019 年にテレビでよく聞いた「爆買い」といった言葉はあまり聞こえなくなったように思えるが、改めて外国人入国者数の推移を調べてみた。 2025 年 3 月 14 日に出入国在留管理庁から公表された、「令和6年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について」に掲載されている「外国人入国者数・日本人出国者数等の推移」(第1図)によると、 2024 (令和6)年はなんと 4,034 万人という過去最多を記録していた。参考値として記載されている訪日外国人旅行者数(観光庁公表値)も 3,687 万人で過去最多である。 過度に旅行者が集中するとオーバーツーリズムといった弊害があるかもしれないが、せっかくここまで外国入国者数が戻ってきてくれているのであるから、どうしても牛乳・乳製品の需要増を期待せざるを得ない。 米の生産における過去の減反政策しかり、コロナ禍での生乳生産抑制しかり、日本の農業は需給緩和時の対策が入口(生産側)を縮小させる方策に寄りがちである。しかし、土地、生き物、気候、時間を相手にした産業である農業は「今年抑えた分を来年に上乗せして作る」といった生産能力のキャリーオーバーはできないのだから、生産抑制策をとると必ず長期間で影響が出る。ましてや酪農は牛のライフサイクルと共にあり、回復に長い時間が必要な農業である。農業は平時から出口(消費側)の対策を考え続けなければならない。だからこそ、繰...

コラム22 『ゴルフボールをまっすぐに打つ方法②』

  [酪総研コラム22 ー2025年6月掲載]              『 ゴルフボールをまっすぐに打つ方法② 』     ゴルフボールをまっすぐに打つために、クラブのフェイスをいかにボールにフラットに当てるかを考え、グリップを左手の親指をクラブに沿って平行、そして真上に、右手の親指もクラブに沿って左の親指の真上に持ってきて、インターロッキングで構え、左と右の親指を一直線(体に対して垂直)にして、ボールを打つ 30 センチ手前から売った後 10 センチの間、その垂直を常に維持してスイングをしていると昨年の3月、本コラムに書いた。  結果、シーズン初めは程よいチーピンとなり、球筋がドローとなって上々の出来だったのだが、だんだん左への曲がりが強くなって二進も三進もいかなくなった。何事にも上手い人と下手な人がいるが、ゴルフの上手い人というのは、打ち方は様々だけれども、ちゃんとボールをミート出来るのである。当方は後者で、今回は右手の親指と人差し指に力が入って、進行方向への右手のコックを止められなくなってしまった。  ということで、現在右手のグリップは中指、薬指、小指でしっかり握り、親指と人差し指は握らず添えるだけにしている。そしてクラブフェースをボールにバチンと当てるというイメージだけを持って、クラブを振ることにしたら、ボールをミート出来る確率が上がってきた。昨年はボールをまっすぐに打つということを、グリップをどうするかによってやってみようとしたのだが、今年はイメージをしっかり持ってフェイスをフラットに、それに加えてバチンとボールに当てようと練習してみた。ドローボールは出なくなったが、今程よいチーピンとなって、まっすぐのボールも出始めている。結果的にグリップの両親指の重ね具合は昨年とあまり変わらないのだが、うまくミート出来た時はハンドファーストになっているように思う。下手は下手なりにチャレンジを続けていきたい。  ゴルフ場は自然に優しいと言うつもりはないが、ゴルフ場に行くとエゾシカやエゾユキウサギ、エゾリスをよく見かける。昨年どこかのゴルフ場でキタキツネがショートホールのガードバンカーに巣を作っていたことがあった。かなり大きな穴を開けていたので、ボールが入っていかなければよいなあ、ここを回るゴルファーはみんなそう思いながら、ボールを打つことに...

コラム21 『生成AI?オヤジにも使えました』

  [酪総研コラム21 ー2025年5月掲載]              『生成AI?オヤジにも使えました 』   話題の“生成 AI” に、ついにオヤジも手を出す 最近、生成 AI が大きな注目を集めている。酪農に関わる仕事を長年してきたオヤジ世代の私も、ついにこの技術に手を出してみることにした。 ちょっと前までは「 IT だ」「 IoT だ」と言っていたのに、気がつけば「生成 AI 」の時代になっていた。技術の進歩は本当に早いと、改めて思う。 生成 AI とは、機械学習アルゴリズムを用いてテキストや画像を自動生成する技術のことで、 ChatGPT (※1)や Midjourney (※2)などが代表的な例だ。これらのツールは、情報収集や文章作成、創作などを効率的に行うために使われ、さまざまな分野で活用が広がっている。   使ってみてわかった!便利すぎる AI の力 社内で提供されている生成 AI を実際に使ってみると、その便利さに驚かされた。とにかく、情報の引き出しが早い。質問すれば即答、関連情報もどんどん提案してくれる。 しかも、文章作成や資料作りの時間を大幅に短縮できる。研究のサポートやアイデア出しにも強く、日々の業務を効率よく進められるのは非常にありがたい。   でも、便利すぎるがゆえの落とし穴も… ただし、生成 AI には落とし穴もある。たとえば、生成された内容が必ずしも正しいとは限らない。情報の正確性や出典を確認する手間は、どうしても必要だ。また、あまり頼りすぎると自分の考える力や創造力が鈍ってしまう危険性もある。 「使いこなす」意識を持って付き合わないと、便利さに呑まれてしまうこともあり得る。   人の仕事が AI に奪われる? その前に考えたいこと 生成 AI の進化により、人間の仕事が機械に置き換えられるのではないかという不安の声もある。確かに、単純作業や一部の創造的な仕事は影響を受けやすい。また、プライバシーやセキュリティといった課題も指摘されており、安心して利用するためには法律や倫理面での整備が不可欠だ。   AI が生み出した “ 酪農賛歌 ”―― 歌詞はお見せできませんが、その実力は本物です 「 AI で歌なん...

コラム20 『アンコンシャスバイアスについて考えてみる』

  [酪総研コラム20 ー2025年4月掲載] 『アンコンシャスバイアスについて考えてみる 』 先日、自宅でテレビを見ていると、ある CM が流れた。映像には人間の声が一切なく、顔も映らない。テレビ画面には、漫画のコメント風の吹き出しに「(ディナー会計時)支払いはカードで」「ピンク色のぬいぐるみが欲しい」と言った「文字」のみが表示される。そして最後に「聞こえてきたのは男性の声ですか?女性の声ですか?」「無意識の偏見に気付くことからはじめませんか?」というメッセージが流れる。これはある CM の「聞こえてきた声」という作品だ。 私は差別や偏見には敏感な方だと思っていたが、この CM を見た瞬間、無意識のうちに「支払いは男性の声」「ピンクのぬいぐるみは女性の声」と想像していたことに気づき、ハッとさせられた。頭の中で「そういうものだろう」と自然にイメージしてしまっていたのだ。最近、社内の研修でも「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」について学ぶ機会が増えたが、改めて調べてみると、内閣府男女共同参画局の資料( ※ 1)にはこうある。「『自分自身は気づいていない、ものの見方やとらえ方のゆがみや偏り』を指し、自分自身では意識しづらく、ゆがみや偏りがあるとは認識していないため、『無意識の偏見』と呼ばれる。」私自身も例に漏れず、無意識の偏見を持っていたことを思い知らされた出来事だった。 ここで少し話を変えて、「酪農」に対する一般的なイメージについて考えてみたい。おそらく、多くの人は「広々とした放牧地で牛がのびのびと過ごし、青々とした牧草を食べている」といった光景を思い浮かべるのではないだろうか。しかし、酪農王国・北海道においても、多くの乳牛は基本的に牛舎内で過ごし、 1 日 2 回以上、トウモロコシや大豆などの穀物を配合した「濃厚飼料」を与えられているのが現実だ。さらに、令和 4 年度の日本の飼料自給率は全体で約 26 %。このうち粗飼料(牧草など)は 78 %の自給率を確保しているものの、エネルギー源となる濃厚飼料の自給率はわずか 13 %( ※ 2)。つまり、乳牛の主要な飼料のおよそ 8 割は海外に依存しているのだ。 この事実は酪農業界では常識かもしれないが、一般消費者にはあまり知られていない。つまり、「国産の牛乳・乳製品」は国産の飼料だけでできていると...

コラム19 『日本酪農発祥の地で心に刻まれた事』

  [酪総研コラム19ー2025年3月掲載] 『日本酪農発祥の地で心に刻まれた事 』   日本酪農発祥の地は安房国嶺岡牧(まき)、現在の千葉県南房総市と言われている。八代将軍徳川吉宗が享保13年(1728年)にインド産といわれる白牛を3頭飼育し、これを基に頭数を増やしていったそうである。吉宗公が牛乳を使って乳製品を作ったことが日本の酪農の始まりとされており、現在は「千葉県酪農のさと」として整備され白牛も数頭飼われ ている。  ご存じのとおり千葉県は全国有数の酪農県として発展してきており、生乳生産量は年間 18 万トンを超え、全国ランクは 6 位を誇る( 2023 年度)。 そんな千葉県で今から 7 ~ 8 年前に出会った酪農家さんの思い出がある。大ベテランで御年 70 歳は超えているとお見受けした。後継者は居ないが 15 頭ほどの牛を飼い、毎日搾乳を行っていたが膝の調子が良くないようであった。  作業がいよいよ辛くなってきた彼は膝に人工関節を入れる決心をした。手術をして入院しなければならないため、年齢的にも牛を飼うのを諦めるのかと思ったが、彼は違った。一旦牛を手放してしまうと、二度と酪農が出来なくなると考え、地域の仲間に牛を預けて手術を受ける準備をした。乳代をそっくり預託代として引き受けてくれた仲間に渡すと彼は言っていた。若いころから酪農を続けてきて大変な苦労があったと思うが計り知れない喜びもあったのだと思う。まだまだ諦めず牛を飼いたいという気骨を感じた。 日本酪農発祥の地で出会った老酪農家の牛を愛する想いは今でも忘れられないほど心に刻みつけられた。そんな出会いであった。その後、異動で関東を離れたので残念ながら彼とは会えていないが、膝を治して酪農を再開したと思われる。

コラム18 『農福連携と農業者福祉のはざま』

[酪総研コラム18ー2025年2月掲載] 『農福連携と農業者福祉のはざま 』   2019 年 4 月、農福連携の全国的な機運醸成を図り強力に推進する方策を検討するため、内閣官房長官を議長とする省庁横断による農福連携等推進会議が設置された。そして、その第 2 回会議( 2019 年 6 月開催)で「農福連携等推進ビジョン」を決定し、今後のマスタープランが示された。  農福連携とは何か。上記のビジョン( 2024 改訂版)では「農業と福祉が連携し、障害者の農業分野での活躍を通じて、農業経営の発展とともに、障害者の自信や生きがいを創出し、社会参画を実現する取組み」としている。ちなみにこのビジョンでは農福連携を農業分野と障害者に限定せず、その対象を高齢者、生活困窮者、ひきこもりの状態にある者等の就労・社会参画支援、犯罪者・非行者の立ち直り支援等にも広げ、また、その受入先も農業のみならず林業や水産業に広げるユニバーサルな取り組みという趣旨から、 “ 農福連携等 ” という語句を用いている。  では、なぜ農福連携が注目されているのか。先のビジョンには、農業分野の期待(喫緊の課題である労働力確保)と障害者側の期待(農業を通じた働く場の確保、賃金・工賃等の向上、地域社会への参画等)を結び付けることで、農業・農村の課題解決に期待できる旨が記されており、実際に農業経営体や福祉サービス事業所が得た農福連携効果を示す調査結果も紹介されている1)。また、こうした取り組みは 2015 年に国連が定めた SDG s(持続可能な開発目標)のひとつである「すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長及び働きがいのある人間らしい仕事の推進」にも通じる地域共生社会の実現に資する取り組みとも位置付けている。そして 2024 年 5 月に可決された改正食料・農業・農村基本法においても、その第 46 条に “ 障害者等の農業活動への環境整備を進め地域農業の振興を図る ” といった農福連携に関わる条項が盛り込まれ、その存在感は次第に増している。  農福連携は初めて農福連携等推進ビジョンが示された 2019 年当時 4,117 主体あり、その後 5 年かけて新たに 3,000 主体を創出させる目標により認知度向上と促進・拡大を図ってきた。農林水産省の資料「農福連携をめぐる情勢」をみると...

コラム17 『2025年も暑いようだ。早め早めの対応をしていこう!』

[酪総研コラム17ー2025年1月掲載] 『 2025年も暑いようだ。早め早めの対応をしていこう! 』 新年明けましておめでとうございます。 今年は巳年。皮を脱ぎ捨て新しく生まれ変われるよう努めてまいりたいと思います。 今年も酪農総合研究所は自給飼料の生産・利活用を推進し、微力ながら酪農・乳業、酪農生産者のお手伝いとなることができるような調査研究を進めてまいりたいと考えています。本年も一層のご支援、ご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。 2024 年の天気を振り返ってみよう。 2024 年は記録的な暖冬から始まったが、3月に寒の戻りがあり桜の開花は遅かった。夏から秋にかけては東・西日本、沖縄・奄美で統計開始以来最も高い気温を記録した(気温平年差:東日本+ 1.6℃ 、西日本+ 1.5℃ 、沖縄・奄美+ 1.0℃ 、北日本+ 1.6℃ )。記録的な猛暑であり、とにかく暑い一年だった。 さて、 2024 年末に日本気象協会から 2025 年の天気傾向について公表があったので概要を見てみよう。『 2025 年は、ラニーニャ現象の影響でメリハリのある天候が予想されている。冬は寒く始まるが、春は早く訪れ、夏は猛暑となり、秋も残暑が続きそう』ということだ。 とすると、今年の気象傾向は去年とあまり大きく変わっていない。であるならば、自給飼料生産や飼養管理はこれまでの暑さの経験を生かし、先々の対応を考えよう。 自給飼料生産においては、春の圃場仕事の開始が早まり、作物の生育速度も早くなることが予想されるので、牧草・飼料作物の品種や早晩性の選択、播種・収穫の時期などに注意深い検討が必要となる。収穫時期に対する考え方もこれまでとは違うと考えておいたほうが良いかもしれない。昨年は、牧草もサイレージ用トウモロコシも概ね良好な生育状況であったと思う。昨年同様に対応を行い、良い自給飼料を得たい。ただ、地域差が大きいことは考慮しておかなければならない。春の干ばつや収穫時期の長雨などが考えられるので、その地域では特別な対応が必要だ。 飼養管理面では、暑熱対策にはハード・ソフト両面での十分な備えをしておこう。もはや北海道でも暑熱対策が必要ないとは言っていられない。なにしろ家庭用のエアコンでさえ必需品となりつつあるのだ。 毎年のことだが、春までまだ少し時間があるので今...